俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
早瀬先生にキスをされた日から、以前にも増して彼を意識するようになった。
好きな人にあんなことをされたのだから当然だ。私のことをなんとも思っていない早瀬先生にとってはなんの意味もないキスでも、彼に片想いをしている私からすればうっかり期待しそうになるから、軽はずみにああいうことはしないでほしい。
それに……。
『俺はもうお前の魅力にやられてる』
あれはどういう意味なんだろう。
『どういうわけか俺は、お前のちょっとした仕草と言葉に弱い。さっきみたいに泣きそうな顔でしゅんとした態度を取られると全力で守ってやりたくなる』
つまり、私の魅力とは〝頼りないこと〟なのだろうか。そうだとしたらあまり嬉しくないような気もする。
「これ、向こうに運んでおくな」
昨夜の夕食に作って余った肉じゃがが入ったお皿を持って早瀬先生がリビングに向かう。その姿を見つめていると、インターホンから来客を知らせる音が聞こえた。
時刻はもうすぐ午前九時になろうとしている。普段はこんな時間に来客は来ないのだけれど誰だろう。
確認するためモニターを覗き込むと、よく知った人物の顔が映っていた。