俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
ハッとしたようにお腹に手を添える陸くん。
「もしかして、お腹空いてるの?」
そう声を掛ければ、恥ずかしそうに顔を上げた陸くんが小さく頷いた。
「実は昨日の夜からなにも食べてなくて。今日も久しぶりに時間が取れたから少しでも早く芙美ちゃんに会いたくて朝食を抜いて急いでここに来たんだ」
「急がなくていいから、朝ご飯はちゃんと食べてから来ようね」
昨日の夕食を抜いた理由が気になったが思い当たることはある。
医学部五年生の陸くんは現在、ポリクリと呼ばれる臨床実習の真っ最中だ。病院のいろんな診療科をローテーションしているらしいが、かなりつらいと思い悩んでいた。
たぶんそのことが関係して夕食を抜いてしまったのだろう。
陸くんのお腹から空腹を告げる音が再び聞こえた。早瀬先生の耳にも届いたらしく、呆れたようなため息が頭上から落ちてくる。
「ちょうどこれから朝食だ。お前も食べろ」
私の体を後ろから抱き締めていた早瀬先生の腕がゆっくりと離れる。そのまま私たちに背を向けて、リビングに戻ってしまった。
早瀬先生の厚意により、陸くんも一緒に朝食を取ることになった。
ご飯とみそ汁は多めに作ってあるのでひとり増えても余裕がある。肉じゃがも出汁撒き卵も足りるだろう。魚だけもう一匹追加して焼いてダイニングテーブルに運ぶと、朝食がすべて揃った。