俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

「出来立ての温かい料理なんて久しぶりだ。しかも芙美ちゃんの手料理……」

私の向かいの席に座る陸くんがみそ汁をすすり、しみじみと呟く。この様子だと、しばらく食事は手を抜いたものばかりを食べていたのかもしれない。

「陸くん、病院での実習はどう?」

気になって尋ねると、陸くんは箸を持ったまま深いため息を吐いた。

「大変だよ。なにがつらいってドクターや看護師との関係で、気を遣うのが疲れる」

どうやら人間関係で悩んでいるらしい。私は、隣の席で出汁撒き卵を食べている早瀬先生を見た。

「早瀬先生から陸くんになにかアドバイスはありますか」

今は手術をたくさんして、医療現場の最前線に立っている彼にだって、医者の卵だった時代はあるのだ。当時の悩みや迷いなど、今の陸くんにも共感できる話題があるのではないかと思った。

「いや、特にない。俺はポリクリでそこまで悩まなかったからな。むしろなにをそんなに悩むことがあるのか理解できない」

……聞かなければよかった。

涼しい顔でみそ汁をすする早瀬先生を、陸くんが箸をぎゅっと握り締めながら睨むように見つめる。

「そうだよな。あんたは神経が図太そうだから人間関係になんて悩まないよな」
「ちょっと陸くん!」

その言い方は早瀬先生に失礼だ。
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