俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

思い掛けない人物の登場に慌てて彼のもとに駆け寄った。

「どうして山之内さんがここに?」
「驚かせてごめんね。こっちで学会があったんだ。せっかく東京まで来たから芙美ちゃんの顔を見てから帰ろうと思って」

山之内さんは私の連絡先を知らない。でも勤務している病院は知っているので、直接ここに来たのだろう。

途中で未華子先生に会って、ナースステーションまで案内してもらったのかもしれない。

「芙美ちゃんの仕事は何時に終わるの?」

山之内さんに尋ねられて、ちらっと時計に視線を送る。

「今日はあと一時間ほどで終わると思います」
「そっか。それじゃあそのあと食事でもどう? 近くのカフェで待ってるから」
「はい。終わったらすぐに行きます」

そう答えた私のことを未華子先生がじっと見てくる。なにか言いたそうにしているが、なにも言わないまま白衣のポケットに両手を突っ込んだ。

「またあとでね、芙美ちゃん。お仕事頑張って」

山之内さんが手を振ってこの場をあとにする。私もまた小さく手を振り返して彼の背中を見送っていると、未華子先生が体当たりするように私に体をくっつけてきた。

「さっきの人、芙美ちゃんのお父さんの病院の医者なんだってね」
「はい。山之内さんといって、専門は呼吸器内科です」
「随分と仲良さそうだったけど?」

未華子先生が私の顔をじーっと見てくる。
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