俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
山之内さんと歩いているとバッグの中でスマホが震えた。
取り出して確認すれば早瀬先生からで、食事場所を尋ねるメッセージが届いている。ちょうど信号が赤に変わったので立ち止まり、返信をしたところで青になったので再び歩き出した。
「芙美ちゃん。遅くなったけど結婚おめでとう」
隣で山之内さんが微笑んでいる。たぶん父から聞いたのだろう。ありがとうございますと答えれば、山之内さんは笑みをいっそう深くした。
「実は、東京に行くなら芙美ちゃんの様子を見てきてほしいって島野院長に頼まれたんだ」
「父にですか?」
「心配なら自分で会いに行けばいいのにね。でも、僕も芙美ちゃんのことが気になっていたから、こうして元気な姿を見られてよかった」
「私は元気ですよ。父にもそう伝えてください」
山之内さんに笑顔を返しつつ、心の中は戸惑っている。
どうして父は山之内さんに私の様子を見てくるよう頼んだのだろう。少しは私のことを気に掛けてくれているのだろうか……。そう考えて、首を横に振った。
父が私のことを心配するはずないから。
「島野院長から聞いたけど、芙美ちゃんの旦那は同じ病院の心臓血管外科医なんだよね」
「はい。山之内さんと一緒にナースステーションまで来た女性の先生と幼馴染なんですよ」
「女性の先生って成田さんだよね。小児科医の」