俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない

すでにお互いに自己紹介をしたのだろうか。未華子先生も私が教える前に山之内さんが私の実家の病院で働く医師だということを知っていたから。

「きれいな人だよね、成田さん」

うっとりとした目で呟いた山之内さんの横顔を思わずじっと見つめてしまう。この反応は、もしかして未華子先生のことを気に入ったのだろうか。

山之内さんは独身だし、未華子先生とも歳が近いから恋愛感情が芽生えてもなにもおかしなことはない。もしもそうだとしたら応援したい。

山之内さんが照れたような表情を浮かべて私を見た。

「芙美ちゃん。よかったら連絡先を――」

そのとき、後ろからぐいっと腕を引かれた。

振り向けば早瀬先生が立っている。眉間に皺を寄せて、山之内さんを睨むように見つめていた。

「人の妻に堂々と連絡先を聞くなんてふざけた真似はやめろ」

どうしてここに早瀬先生がいるのかはわからない。けれど、彼がとんでもない誤解をしていることだけはわかった。

「違うんです、早瀬先生」
「芙美は黙ってろ」

ぴしゃりと言われて、それがこわくて口を閉じてしまった。早瀬先生の視線が山之内さんに向かう。

「芙美はあなたと食事には行かせない。俺がこのまま連れて帰るんで」
「えっ、あの、早瀬先生」

早瀬先生が私の腕を掴んだまま引っ張るようにして歩き出す。
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