俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
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朝、七時。
カンファレンスルームにて医師が集まり、昨日の当直医から夜間に救急で運ばれてきた入院患者の簡単なプレゼンを受ける。
その後、朝の回診が始まるのだが、その途中で患者が急変したと報告があった。先日、郡司先生を執刀医にして、俺も助手に入ったオペを受けた患者だ。
かなりの時間を要した難しいオペだったこともあり、特に慎重に経過を観察していたのだが、術後の合併症で肺炎を起こしてしまった。大きな手術のあとには起こり得ることだ。
できる限りの治療を施し、とりあえずは容態が安定。このまま快方に向かえばいいが、予断を許さない状況だ。
今日は一般外来での診察担当ではなく手術も入っていない。入院患者のカルテ記載をしつつ、今朝急変した患者の容態をときどき確認しているとPHSに連絡が入った。緊急で運ばれてきた患者対応のための呼び出しだ。
駆け付けると、患者は六十代後半の男性。数人の仲間とテニスをしていたところ、突然胸を押さえて倒れ、そのまま心肺停止の状態で運ばれてきた。
急性心筋梗塞だ。冠動脈の一部の血流が途絶え、心筋に十分な血液が流れ込まなくなる状態のことだが、この患者の場合は血栓が大きくて完全に血管を塞いでしまっている。一刻を争う危険な状態だ。