俺様ドクターは果てなき激愛で契約妻を捕らえて離さない
もしも……なんて言葉は医療の世界にはあり得ないが、それでも発症してから初期の時点で心臓マッサージやAEDなどの迅速で適切な救命処置が行われていれば……と、考えてしまう。
今回は仲間も一緒にいて、テニスコートの施設内にはAEDも備わっていたようだが、誰ひとりとしてその知識がなく、行動に移せなかったらしい。
ただ救急車の到着を待っていたらしいが、その前にできることはある。
患者は緊急手術となり、そのまま俺が執刀することになった――。
*
「――早瀬くん」
面会の時間を迎えた午後の院内を移動していると、後ろからポンと肩を叩かれた。この声は成田だ。
足を止めることなく振り向けば、隣に並んだ彼女が俺のペースに合わせて歩き出す。
「午前中に運ばれてきた患者は助かったの?」
心筋梗塞の患者のことを言っているのだろうか。どこで耳にしたのかは知らないが、どうやら知っているらしい。
「ああ。一命は取り留めた」
「さすが。執刀したのは早瀬くんって聞いたけど?」
「まぁ、そうだな」
「手術、無事に成功してよかったね」
成田の言葉を頭の中で反芻しながら、白衣のポケットに手を突っ込む。
「成功したかどうかは患者が無事に退院しないとわからないだろ」
「相変わらず頭が固いなぁ」
呆れたような視線を向けられてしまう。それを無視するように歩くペースを速めると、俺の視界に見知った女が写り込んだ。