切れない縁
〜…〜…
「あ、兄貴だ。志穂、ちょっと路肩に停めるな」

「うん。」

「もしもし兄貴?珍しいな。健一郎に何かあった?」

「お前は今、草津温泉の帰りか?」

「え?なんで兄貴が…」

隆二は後ろから車から来てないか確認して外へ出た。

「美波ちゃんがお前らが泊まった宿の予約確認の電話をとったから、美波ちゃんはお前が出張じゃあないと知ってたんだ。
そしてなぁ、離婚届を置いて家を出たんだぞ!」

「兄貴、何言ってんだよ…」

「お前が1年以上前から不倫してるのを美波ちゃんは知ってたんだ。
親父とお袋に浮気調査書と離婚届を置いて家を出て、昨日は健一郎に離婚する説明をしにきたらしい。
さっき親父に電話したらお袋はショックで寝込んでるとさ!

隆二。お前マジで最低だ!
その不倫相手と一緒に地獄へ堕ちろ!
呑気に不倫旅行なんかしてる場合じゃあないぞ。
すぐに家に戻れ!
俺もこれから健一郎連れて家に行く。
家族会議だからな!わかったな!すぐ戻れよ!」ピッ!

兄貴の怒鳴り声の話しが耳から離れない…

"美波が1年も前から俺と志穂との関係を知ってた…そして…離婚届を置いて家を出た…"

車の座席に戻った隆二の顔を見て
「隆二。顔色が真っ青よ。何があったの?」

「美波が離婚届置いて家を出た…」

「え、美波さんが?
じゃあ、私たちの事がバレたの?」

「ああ。兄貴の話では1年以上前から美波にはバレてたらしい…」

「じゃあ私たちの関係が始まった頃から美波さんは知ってたって事なのね……
……で?お兄さんは何て?」

「ウチの息子と一緒に家に戻って家族会議するからすぐに家へ戻れって」

「じゃあ。急いで帰りましょう」

「………」隆二は無言で車を発進させた。
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