切れない縁
村瀬志穂さんの身元調査も入っていて、子宮の全摘の事や離婚経験者という事。
また、本社で不倫していた相手名前や、その奥様から慰謝料を請求され支払いもしている事が細かく記載されていた。
全て事実だった。
「村瀬さん。この通り娘さんの社会人としてモラルを疑うような行動を見て、裁判官はどんな判決を出すのでしょうかねぇ。」
「いや、ウチとしては娘が亡くなって悲しくて、理性もなくコチラへ怒鳴り込んでしまい申し訳ございませんでした。」
「じゃあ、井上さん。隆二さんの奥様に話しをして村瀬志穂さんへ慰謝料を請求しますか?」
「長谷部弁護士。ウチは、人様の家庭を壊すことも平気な女性が育ったお宅からのお金は受取りたくないので、慰謝料の請求はいたしません!」
「村瀬さん。良かったですね。これでまた慰謝料を請求されたら、ご近所の方々のウワサになりますもんね。」
「え、………」
そう…以前の不倫の時に相手の奥さんが村瀬さんの自宅前で大声を出して騒いだので、ご近所さんには不倫してた娘の家だとレッテルを貼られているのを長谷部弁護士は既に調べ上げていたのだ。
そして今回の村瀬家側の葬儀を手伝った社員たちのウワサ話しを、葬儀に参列した近所の人たちが耳にしただろうと推測された。
「イヤ、その…」と村瀬の両親は言葉に詰まり、そそくさと帰って行った。
美波と健一郎が知らないところでこんな修羅場があったのだ。