切れない縁
仙台のアパートへ戻った私を、友子さん夫婦はさりげなく見守ってくれた。


私は結局離婚できなかった。


隆二さんの妻の立場でいろいろなお金を受け取る事になったのだが、
すべて私が受け取るべきだと言ってくれた井上家のみなさん。

仙台の市役所で長谷部弁護士から渡された隆二さんの死亡診断書を持って寡婦の手続きと住所変更もした。

年金事務所へも長谷部弁護士から聞いたように手続きをすると、私の年金が出る予定の65歳まで遺族年金が支給されると説明を受けた。

隆二さんは亡くなっても遺族年金で私を養ってくれるのかぁ…

私と隆二さんは、縁が切れないって事なんだなぁ…

私は、縁を切ってサッパリしたかったのに…
そうはさせてもらえない事を実感してる。

再婚する気は全くない。

近い将来への希望は、健一郎が獣医になって結婚して孫ができるのを楽しみに生きていこうと思っている。

1人になったし、思い切って鎌倉の青木家へ遊びに行こうと思っている。
折角なので井上家にも顔を出すつもり。

お金の運用の相談は札幌の父さんとお兄ちゃんにしよう。
札幌へは心配かけたので頻繁に顔をだそうと思う。

9月からアルバイトをスタートしようと友子さんと決めた。
私の事情を全て受け入れてくれる坂上夫妻には感謝しかない。

最近やっと仙台の繁華街のデパートへ行ったり、地下鉄で冒険したり出かけるようになった私。

健一郎にその話しをしたら、
「地下鉄で冒険って〜まるで小学生だなぁ。
駅構内の階段で転ぶなよ。」と馬鹿にされた。
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