切れない縁
私は、家族が揃っているのでみなさんに自分の考えを話す事にした。

「あの〜、家族が揃っているのでちょっとお話しがあるんですが…」
健一郎以外は顔が硬直した。

「明日お墓参りもしますが、隆二さんが亡くなったので離婚届は出せず、私は井上美波のままです。
隆二さんと別れたくてこの家を出ましたが、隆二さんがいないですし、この家へ戻ろうかどうしようか悩んでいるんです…」

「美波ちゃんホント!私は大歓迎よ!ねぇお父さん、浩一。」

「本当にここへ戻って辛くないかね」

「美波ちゃん。隆二が亡くなってもアイツの面影がある家だぞ?」

「はい。わかってます。でも…やっぱりお義父さんやお義母さんと一緒に暮らしたい気持ちが大きいんです。」

お義母さんはポロポロ泣いてしまった。
「美波さん。本当にありがとう。俺も母さんも美波さんの気持ちが嬉しい。
もし、美波さんが戻ってくれるなら、隆二が美波さんを傷つけた分、もっと美波さんを大切にしたいと思う。」

「美波ちゃん。本当に親父とお袋と暮らすのか?
自分の親じゃあないのに数十年後には介護とかもあるんだぞ」

「はい。それも覚悟の上です。」

「ケンはどう思う?」

「俺はやっぱり実家はここだし、まぁ母さんは父さんと離婚できなかったけど、もう父さんもいないからここへ戻ってくれるなら俺は安心。」

「じゃあ、親父もお袋もケンも俺たちもみんな同じ意見だな。
美波ちゃん、改めて言うけど本当にありがとう。ここにいるみんなはこれからも美波ちゃんを大事にするからね。」

私も泣きながら
「これからも、どうぞよろしくお願いします」と頭を下げた。
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