壊れるほどに愛さないで
ぼやけた天井を眺めながら、友也の言葉を頭の中で繰り返す。でもいくら友也の言葉を繰り返しても、きちんとは飲み込めない。

友也は、私を愛していて、私も友也を愛してる。 

今までは純粋にそう思ってた。そして、その愛を慈しむように大切に、二人であたためてきた。そう思ってた。でも、それはいつしか、カタチを変えてしまっていた。

少なくとも私の中では。

雪斗と出会ってから私の心の中には、雪斗が棲みついてしまったから。 


「ごめ……もう……帰って……」 

私は、散らばっていたワンピースと、キャミソールを掻き集めると小さく丸くなった。

「……ごめん……美織……僕、なんてこと……」 

友也の声も震えていた。そして、その声は、後悔の念を含んでいることもわかる。それでも、今の私は、友也が側にいる事すら、心も体も拒否をしている。

「……見、ないで……」

「ごめん……本当にごめん……今日は、帰るから……また連絡するから……」 

友也は、自分の着ていたジャケットを私に掛けると、静かに扉を開けて出て行った。
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