壊れるほどに愛さないで
ハンドルを握る雪斗を眺めてから、私は、スマホを確認する。友也からの連絡は、まだない。もしかしたら、送りづらくて悩んでいるのかもしれない。 

『僕だって嫉妬くらいするよっ』

友也の怒りと哀しみに満ちた顔を思い出すと、呼吸が、苦しくなりそうだ。

友也にあんな顔をさせたのも、友也が、私を乱暴したのも、私が、雪斗に惹かれてしまったからだ。だから、私は、あんな事をされても、友也だけを責めることなんてできない。友也だけを見つめていられたら良かったのに。友也が、ずっと私だけを見つめて大切にしてくれていたように……でも、もう後戻りはできない。

ーーーー私の心は、雪斗にもう持っていかれてしまったから。

「大丈夫?」

「あ、うん、大丈夫だよ」 

私が、シーチキンのおにぎりをパクンと一口食べると、信号待ちを、していた雪斗がククッと笑う。

「あ……シーチキン。白だから?」

「あはは。うん、美織って白いもの、本当好きなんだなって」

雪斗は、クリームパンを食べ終わると、缶コーヒーで流し込んだ。信号待ちで停まると、雪斗が私の瞳を捕まえた。

「ね、白いもの好きなんだったらさ、俺の事も好きになってよ」
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