壊れるほどに愛さないで
美織は、鞄の底から、一冊の恋愛小説を取り出した。俺が、結局読まずに、美野里から借りたままの恋愛小説だ。

そして、本の間から一枚の写真を取り出した。そこには、黒髪の一人の女の子が写っている。

「こ、れ……」

俺の心臓は、ドクン、と大きな音を立てて、呼吸は、浅くなる。

「雪斗?」

美織が、見せてくれた写真は、間違いなく4年前、俺が、このコスモス畑で撮ったものだ。

光の加減、被写体の角度、目線、全て、俺の好きな撮り方だ。写真の切り取り方で、人それぞれ個性が出る。

「美野里……」

その名前をまさか、美織の前で呼ぶとは思わなかった。

「みのり……さん?」

美織が、気づいたのか、大きく瞳を開くと、口元を覆う。

「この本と写真どこで?」

「……友也の家……」

美織の指先が、小さく震えているのが分かった。
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