壊れるほどに愛さないで
僕は、コンビニで買った、おにぎりを片手に営業車の中で昼休憩を取っていた。朝から何度スマホを眺めただろうか。
僕は、いつもは買わないシーチキンのおにぎりを口に入れながら、美織の涙を思い出していた。
「あんなの強姦と一緒だ……」
僕は、食べかけのおにぎりを助手席に置くと、ハンドルに突っ伏した。瞳を閉じれば、美織の怖がって、やめてと叫ぶ悲痛な顔が蘇る。
あんなことできれば、したくなかった。今更ながら、後悔の念は募るばかりだ。それでも、自分を抑える事ができなかった。
美織を繋ぎとめたくて必死だった。
美織が、大切だから愛してるから。
「待野雪斗……」
僕は、昨日、郵便受けの前で抱き合っている美織と待野雪斗を見て、一瞬、美野里と待野雪斗に見えた。美織が、自動販売機の前で話していた男も、歓迎会があると話していた日に泊まったとき一緒にいた男も、待野雪斗だ。
僕が、美織と電話していた時、聞いたことある男の声がしたが、今思えば当然だ。
僕が、あの男を忘れるはずがないから。