壊れるほどに愛さないで
「待野くん、内線2番に山田総合病院からお電話です」

私が、電話を保留にして、雪斗に声をかけると、雪斗は、すぐに受話器を上げた。

「はい、竹林製薬、待野です」 

隣の雪斗の声を聞きながら、私は、コスモス畑での雪斗の言葉が頭から離れない。


ーーーー『美野里は、ストーカーにあってたから』

その言葉を頭に浮かべては、その度に、苦しくなる。泣き出しそうになる。

(友也……)

私が、友也から借りた、恋愛小説に挟まっていた女性の写真は、友也の恋人ではなく、雪斗の恋人だった。

そして、美野里もまた、今の私のように、誰かから写真を送り付けられたり、無言電話があったと、雪斗が、コスモス畑からの帰りの車内で話してくれた。

(友也が……ストーカーなの……?)

少なくとも、友也と付き合っていた3年間、いつも優しく穏やかで、昨日のように、激しい感情を剥き出しにしたことなど、一度もなかった。

それでも、雪斗と私が抱き合っていた時の友也は、激しい嫉妬を纏った瞳をしていた。それに、気のせいかも知れないが、友也は、雪斗を見た瞬間、驚いた顔をしたようにも見えた。

(もしかして、友也は、雪斗を知ってる……?)
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