壊れるほどに愛さないで
「恭平から聞いたけど……美野里さん、亡くなったらしいから……4年前に。恭平は詳しく知ってるみたいだけど、私には、そう答えただけだったから詳しくはわからない」

(……4年前か……)

今日コスモス畑で、雪斗は、美野里とは、『別れたんじゃない』と話してくれた。

別れていないのに、いま、雪斗の側に美野里さんは、いなくて、雪斗は、ワンピースを大切に保管するほどに、未だに美野里さんを忘れられない。

そして、美野里さんとは、別れていないのに、どうしても会えないということ。導きだされる結論は、一つしかない。 

ーーーーもう、美野里さんは、この世に居ないということだ。

「私が、美野里さんに似てるからかな……」

顔は、違うが、全体的な背格好や、瞳の形が、美野里さんと私は似ている。和が、私の頭をそっと撫でた。

「それは……違うんじゃないかな。雪斗くんの気持ちは、雪斗くんにしか分からないけれど……ただ、亡くなった恋人に似ているからって、人は、恋に落ちたりしないと思う。もっと、何か目に見えない、糸みたいに、引き寄せられて、気づいたら、その糸と糸が、結ばれてる。恋なんてきっとそうなんだよ。目に見えないから、夢中になったり、涙がこぼれたり、苦しくなったり、するんだよ」
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