壊れるほどに愛さないで
「あ、うん。野田雅史先生だよ。やっぱ、美織の担当医?」

『うん。びっくりした……』 

「……ほんとだな」

『雪斗?』

少しだけ間があったからだろう。美織が、心配そうな声を出した。

「いや、美織に会えるから……嬉しいなって」

さっきまで側にいたのに、美織の姿が見えないと不安で堪らなくなるなんて言ったら、きっと美織を困らせるのだろう。

『……私も……もう会いたかったから。じゃあ、また着いたら、医局に向かうね』

俺は、ふっと笑うと、今日撮ったばかりの、白いコスモスと美織の写真を眺めてからスラックスにスマホを仕舞い、見えてきた病院エントランスを潜り抜けた。
< 149 / 301 >

この作品をシェア

pagetop