壊れるほどに愛さないで
ブルっとスマホがポケットで震える。

『嫌な思いさせてごめん。桃葉は大学の後輩で、付き合ってるとかじゃないから。また説明させて。美織にだけは誤解されたくないから』

私は、雪斗からのラインを何度も目でなぞりは。そして、画面の文字がじんわりと滲んでいく。

「……ひっく……ぐす……」

いつの間に、こんなに好きになってしまったんだろう。

自分から手を伸ばす勇気も自信もないクセに、雪斗への想いだけが、膨れ上がって、どこにもいけないまま、心の隅に蹲る。そして、その想いは、やがて粉々に砕け散って、雪斗に見つけてもらうことなく、波に攫われて消えていくのを待つだけだ。

『うん、分かった。連絡してくれてありがとう』

私は、涙を拭うと、車窓に目を向ける。

いつまでも、自分の気持ちに嘘は、つけない。雪斗と友也の間で、宙ぶらりんな自分に終わりを告げなければ、前には進めない。

(それに友也……)

友也とは、なるべく早く話されければならない。友也の父親である、橘院長の事、友也から借りた恋愛小説に挟んでいた美野里の写真……。聞きたいことは、山ほどある。

そして、あの無言電話と、私の盗撮写真……。
あれは、やっぱり、友也なんだろうか。

友也じゃないと信じたい。


ーーーーでも、友也じゃないと今の私は、言い切ることはできない。
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