壊れるほどに愛さないで
「東都大学附属病院の院長、橘友典は、そう、僕の父さんだよ……美織に言わなかったのは、僕、医学部で成績が振るわなくて、中退したんだ。その事が原因で、父さんとの関係も上手くいってないから……何より、医者の成り損ないって事を美織に伝えるのが、嫌だったんだ。ごめん、黙ってるつもりなかったけど、僕のちっぽけなプライドのせいでら美織に言うタイミング逃してしまって……」

知らなかった。
友也が、医大生だったなんて。

それなら、医学部を中退して、私の通っていた大学に、友也は、たまたま編入したと言う事なのだろうか?

そしてたまたま、私達は、出会った?

「この人……は?」

私は、写真を友也に向けた。写真に写っているのは秋宮美野里。雪斗の恋人だ。

その恋人の写真を、どうして友也が持っていたのか。もし、友也が、美野里をストーカーしていて、美野里さんと交際していた雪斗の事を知っていたとしたら?

私と雪斗が、一緒に居た時の友也の雪斗に向けたあの嫉妬を纏った眼差しや、私への乱暴行為にも納得がいく。

「その人は、僕の高校の時の同級生さ。恋人だった……まだ、美織と付き合う前にコスモスを見に行った時の写真だったと思う」

心が、凍りつく。

友也は、今、私に平然と嘘を吐いた。

「嘘……」

「美織?」

やっぱり友也は、私に何か隠してる。そして、きっとそれは、私が、知ってはいけないパンドラの箱だ。

「嘘つかないで!」

「美織っ」

「もう、友也は、信じられないっ」

私が、立ち上がり、鞄を持つと、すぐに友也に腕を掴まれる。
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