壊れるほどに愛さないで
「ダメだ!見ちゃダメだ!」

友也が、大声でさけびながら、慌てて散らばっている、写真をかき集めていく。足は、ガタガタと震えが止まらない。想像していた筈なのに、いざ現実となると上手く受け入れられない。

「美織!違うんだ!全部説明するからっ」

「友也……だったんだね……私に手紙や写真送ったの……」

友也の顔が、歪んでいく。

「美織、僕の話を聞いて」

友也が、立ち上がると私の肩に食い込むほど指先に力を込める。その問い詰めるような強い視線が、私の盗撮写真と重なる。友也が、私を陰から盗撮する姿が、事実かのように頭の中を通り過ぎていく

「痛っ……やめて!もう、もう私にかまわないで!」

私は、力一杯友也を突き飛ばした。

床に手をついた友也の横を、素早くすり抜けると、靴を抱えて玄関から飛び出した。すぐに後ろから、足音が聞こえてくる。私は、夢中で、非常階段を駆け下りると、待たせて置いたタクシーに飛び乗った。

「早く出してください!」

タクシーが、走りだして、すぐに小さく声が聞こえてくる。

「美織!美織っ!」

タクシーの車内で振り返れば、靴も履かずに裸足で佇む友也と目が合った。

私は、全てを振り切るように、視線を外すと、震えた体を両腕で抱きしめた。
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