壊れるほどに愛さないで
「ありがとう……」

私は、乾いた喉を潤すと、雪斗の瞳を真っ直ぐに見つめた。

言わなきゃいけない。

雪斗の恋人だった美野里さんのストーカーも私に手紙や盗撮写真も送ったのは、友也だという事を。

「雪斗……美野里さんのストーカー……友也だったの」

「え?」

「友也から、開けないでって言われてた引き出しを見たら……美野里さんの……隠し撮りの写真……いっぱい……ひっく……ごめんなさい……」

雪斗が、震えながら、泣く私を、ぎゅっと抱きしめた。

「怖かったな……美織は、悪くないから。美織のせいじゃないから……」

雪斗の苦しそうな声に、思わず背中に手を回した。

「……友也、嘘もついたの……美野里さんは、自分の恋人だったって……それに、私が、通ってる東都大学附属病院の橘友典院長の息子だったの……」

「病院長の息子……」

雪斗が、眉を顰めた。

「じゃあ、美織が心臓移植を受けた際、美織を病院で見かけたことがある可能性が高いって事か」

「私と友也は、今から3年前、大学4回の時に出会ったんだけど……友也、医大を中退してたの、それも……もしかしたら……」

「病院で美織を見かけて、医大を中退してまで近づいたってことか。そして、美織にも美野里と同じようにストーカー行為をしてる可能性が高いって事?」

私は、小さく頷いた。

そして、震える唇で、雪斗に訊ねた。
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