壊れるほどに愛さないで
「何よそれ!あんな女のどこがいいの!」

「桃葉には、関係ないから」

顔を上げ、冷たく言い放った雪斗の言葉に桃葉の目尻からは、大粒の涙が転がっていく。

「雪斗こそ目を覚まして!この女は、美野里さんを殺したも同然なんだからっ!」

(え?私……?)

「何言って……桃葉、お前……何知ってる?」

「院長の息子の彼女の、その女に聞いてみれば?」

雪斗が、私を一瞬見ると、すぐに桃葉を睨み落とした。

「二度と、此処には来るな」

桃葉を無理やり玄関先へ放り出すと、雪斗は、強引に扉を閉め、すぐに鍵をかけた。

そして、すぐに、リビングに戻ってきた雪斗は、私の目の前にしゃがみ込んだ。

「ごめん、嫌な思いさせて。桃葉とは……恋人同士じゃないけど……その、関係は、あったから……美野里への気持ちが、どうしようもなく募って、桃葉に甘えてたんだ。最低だよな……」

私は、首を振る。

「私だって……雪斗に甘えてばかりで……
友也とも、別れ話はしたけど、上手く別れられたとは、言えなくて……すごくズルい女だよね……ごめんなさい」

「いや……俺も俺だから。でも、今日美織が、俺のとこ来てくれて嬉しかったから」

雪斗の言葉は、いつだって不安が、降り積もった心を溶かしてくれる。それは、まるでずっと前からそうだったかのような錯覚さえ起こす。 
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