壊れるほどに愛さないで
「ううん……」

何故だか、雪斗が嘘をついているような気がした。

ーーーーでも、その理由は分からない。一種の勘みたいなモノだ。

もう少し聞こうかとも思ったが、さっきの雪斗の様子だと、とても話してくれるとは思えなくて、私は、口をつぐんだ。

雪斗が、私の肩からずり落ちたブランケットを巻きつけ直す。

「なぁ、美織、俺、写真見てて気づいたことあってさ」

「え?何?」

雪斗は、ダイニングテーブルに並べていた写真を私に見えるように絨毯に並べていく。そして、一枚一枚、指差していく。

「この角度……と光の差し込み方向見て。で、これが、美織に家に届いた、盗撮写真なんだけどさ。この撮り方、27期生の先輩達が、よく使ってたんだ、焼き鳥屋の前田勇気(まえだゆうき)先輩とかね。更には、それを真似して、桃葉もこの撮り方よくしてた」

「そう、なの?」

「うん、明日展覧会で、一堂に展示されるから、見に行こう。何か分かるかもしれない」

「分かった……」

僅かに互いの間、沈黙が流れて、私は、先に口を開いた。

「……じゃあ、そろそろ帰るね」

立ちあがろうとした、私の手首は、すぐに雪斗が掴まれる。

「泊まっていかない?何もしないからさ」

雪斗が、肩をすくめながらも、ニッと笑った。

「えと……」

「美織、腹減ってるよな?俺、チャーハン得意だから、一緒に食お?」

雪斗は、いつだって強引だ。でもそれが、嫌じゃ無い。だって、私も少しでも長く雪斗と過ごして、雪斗を、知りたい。側に居たいの。

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

「おう、じゃあ、俺の撮った写真でも見てて。すぐ作るから」

雪斗は、カフェエプロンをつけながら、得意気に木杓子を振った。
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