壊れるほどに愛さないで
スノードロップが、雪から出来ていたなんて知らなかった。

あの時、初恋の男に、スノードロップは美味しいのか訊ねた私は、あながち間違っていなかったのかも知れない。

「ん?どした?」

ふっと笑った私を、雪斗が、不思議そうに眺めている。

「ううん、スノードロップ美味しそうだなって」

雪斗の切長の瞳が、一瞬大きくなった。

「どしたの?雪斗?」

「……あ、いや、何でもない……美織は、やっぱり白いもの好きだな」

雪斗は、私の掌を掴むと、私を引き上げるようにして立ち上がった。

「美織が、また迷子になったらいけないから、手繋いどくな。じゃあ、会場向かおっか」

雪斗が、唇の端を引き上げるのを見上げながら、私は、顔が真っ赤になった。
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