壊れるほどに愛さないで
『ともくん?』

白いコートを羽織った美野里を、僕は、強引に抱き寄せた。

『きゃっ、離してっ……何するのっ』

美野里の瞳が、一瞬で驚きと戸惑いに変わる。

『ずっと、好きだった』

僕は、美野里の後頭部を捕まえると、強引に美野里に口付ける。柔らかい美野里の唇と甘い髪の匂いに、永遠に離したくなくなる。

『ンンッ……やめてっ!』

唇に突き刺さるような痛みと共に、美野里が、僕を突き飛ばした。唇の端からは、血の味がして、すぐに口内に広がる。

『僕とキスするのがそんなに嫌?』

僕は、美野里をリビングのソファーに押し倒した。

『……と、も……くん……?』

美野里の顔と身体の強張りは、恐怖じゃない。僕への拒絶だ。

『僕でいいじゃん』

僕は、美野里の細い両手首を右手で頭の上に固定して、空いた掌でワンピースを胸まで捲り上げた。

『嫌っ……やめて!ともくん!』 

『僕は、ずっと、好きだったんだ』

体を捩って暴れる美野里の胸の先端に唇で触れながら、空いた片手の指先でショーツをなぞっていく。

『やっ、いやっ……やめてっ』

『本気なんだ』

『私は……ともくんの事、そういう目で見れない!だから、お願い!やめて!』

美野里の瞳から涙が、いく粒もこぼれ落ちていき、思わず僕は、美野里の手首を束ねている掌の力を緩めた。

『……美野里、僕は……』

美野里は、捲り上がったワンピースをサッと直すと、転がったバックを持って、逃げるように玄関へと向かう。
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