壊れるほどに愛さないで
予想だにしていなかった事実が、次々と明らかになっていくにつれて、私の思考は、辛うじてついていくが、心は、全く追いつかない。

(友也が……美野里さんの義弟だったなんて……)

そして、友也は、血の繋がらない、義姉の美野里に恋をしていた。叶わない、苦しく切ない恋を。

私は、何度も何度も深呼吸を繰り返す。

「美織、大丈夫?」

「……う、ん」

「ごめん、ビックリしたよね」

私は、上手く言葉が出てこず、小さく首を振ることしかできない。

友也は、寂しげに微笑むと、私の頭を一度だけ撫でた。そして、その表情は、すぐに歪み苦しそうになる。

「友也?」

「まだ……全部じゃないんだ。僕が、美織に近づいた理由……話してないよね?」

もう私の中の心臓が、見えない何かに、力一杯鷲掴みにされて、息苦しい。

友也から言われる事が、自分そのものを変えてしまうような気がして怖くなる。

「……美織、落ち着いて……これを見てほしい……」

友也は、スラックスのポケットから、一通の手紙を取り出した。手紙を持つ友也の指先は震えている。

(何……?手紙?)

どこかで見たことあるような、オフホワイトの無地の封筒で、端にスノードロップが、一輪印字されている。

(……あ!)

ーーーーそのスノードロップをみた瞬間、私は、息を呑んだ。
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