壊れるほどに愛さないで
『……馬鹿なのか?もし僕が、美織のストーカーで、さらには美織を泣かせたり、殴ったりしたなら、僕は、君の電話にわざわざ出たりしない。』

確かにそうだ。俺は、ギリッと奥歯を噛み締める。こんな時ほど、冷静に考えなければならない。

『僕が、君の電話にわざわざ出た理由、わからない?』

(理由……?)

『何度も言わせないでくれるかな。僕は、ストーカーじゃないから』

橘友也が、本当に美織のストーカーじゃないなら、今、俺と橘が共通して、守りたいのも、知りたいのも同じと言うことになる。

つまり……。

「ストーカーを見つける為に、俺に何させたい?」

『ふん、頭は悪くないんだね。そう、僕は、美野里と美織のストーカーを突き止めて、今度こそ美織を守りたい』

俺は、橘友也から出た『美野里』という言葉に目を見開いた。

「やっぱ……アンタが、美野里の従兄弟の『ともくん』か……」

美野里は、両親の離婚後、母親と従兄弟の『ともくん』とその父親と暮らしていたと話してくれたことを思い出す。ただ、亡くなった母親を思い出すからと、美野里は、あまり家の事を話そうとはしなかったし、俺も無理に聞かなかったが、俺と付き合い始めてからは、美野里は、よく一人暮らしの俺の部屋に泊まりにきていた。 

『……美野里の従兄弟ね』

「違うのか?アンタが、美野里がよく話してた、『ともくん』じゃないのかよ?」

『いや、美野里が、話していた、『ともくん』は、僕だよ。そんな事より、美野里が、ストーカーに遭い始めたのは、高校の創立記念パーティーに参加してからなんだ』
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