壊れるほどに愛さないで
美織は勘違いしたんだ。

美織は勇気が赤髪がトレードマークだということを知らない。おそらく突き落とされた時に見た赤髪の男が、勇気だと思って怖がったんだ。

「で、勇気さん、美織は?部屋に戻ったんですよね?」

「いや雪斗、お前さ27期の三橋昇って知ってる?」

俺は心の中で舌打ちする。そしてすぐに呼吸もままならないほどに、鼓動が早足になる。

「いや、知らなかったです。勇気先輩の高校の同級生なんすよね?大学ん時は茶髪のパーマの」

「お、よく知ってるな。昇とは、高校の時つるんでてさー。アイツは看護学校だったけど、写真好きなの知ってたから、うちのサークルに誘って、俺の紹介ってことで、特別に入会させたって訳」

俺は勇気の腕を強く掴んだ。

「その三橋って奴、まさか……今美織と一緒なんですか?!」

「え?てゆうか、よくわかんないけど、さっき昇がいきなり現れて美織ちゃん抱えて、そこの非常階段すごい勢いで降りてったけど?」


──やられた!

「おいっ、雪斗?!」

俺はスマホで橘友也をスワイプすると、そのまま非常階段を駆けおりた。
< 277 / 301 >

この作品をシェア

pagetop