壊れるほどに愛さないで
「嫌っ!触らないでっ! 」

「何なにー、怒らないでよっと」

三橋が私の身体を椅子ごと元に戻す。九十度横をに向いていた視界が正常になると共に、三橋が私を覗き込んだ。

「わざわざ、椅子横にして寝かせてあげたんだよ?俺って優しくない? 」

その(あい)と狂気を纏った瞳にぞくりと鳥肌が立つ。

「ど、うして……?」

怖くて声が掠れる。喉は極度の緊張からカラカラで口内に殆ど水分はない。

「何が?」

言わなきゃいけない。
聞かなきゃいけない。

「三橋さん……がストーカーで……美野里さん……を?」

「ん?あぁ懐かしいね、もしかして美野里を殺したかって話?」

三橋は目を細めると、私から少しだけ距離をとり長机にどかりと腰かけた。

「そうだけど?それがどうかした?」

三橋はいつもの口調で、まるで世間話をするかのように返事をする。

「な……んで?そんな事……どうして」

「え?美織ちゃん、理由知りたいの?そんなの簡単じゃん。自分のものにしたくて、何度も俺にしなよって言ってるのに美野里がさ、雪斗が雪斗がって騒いでさ、ムカついたから刺したら死んじゃった」

三橋はペロリと舌を出すと、悪戯っ子みたいに笑った。

「まさか死ぬとは思わなかったなー。ちゃんと急所は外したんだけどね。俺一応、看護師だしオペ室だって担当してるしね。ま、今頃麻里さんと一緒に楽しくやってんだろうねー」

(まりさん……やっぱり美野里さんのお母さんの麻里さんのことだ)

三橋は、私を見下ろしながら、首を傾げた。

「ね、美織はさ、俺のモノだよね?」
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