壊れるほどに愛さないで
最終章 希望と慰め
──此処はどこだろうか。
長く艶やかな黒髪に白いコートの後ろ姿が見える。
『待って』
僕は慌ててその姿を追いかけるが、彼女との距離は全然縮まらない。
ダメだ。今行かせたら。もう二度と会えない。
──美野里!
僕は、息を切らしながら、ようやく美野里の肩に触れる。
ふわりと柔らかい黒髪が揺れると、美野里が大きな瞳をにこりと細めた。
『ともくん』
僕の鼓動は大きく一跳ねした。美野里に名前を呼んでもらったのはいつぶりだろうか。
『美野里ごめんね……僕……』
美野里は困ったような顔をしながら、僕の掌を握った。
『ともくん、ありがとう』
『え……? 』
美野里の掌は、氷のように冷たい。
『ともくんが謝ることなんて何一つないんだよ。いつも私の事、大事に思ってくれてありがとう……』
僕は、大きく首を振った。
『違うっ!僕が美野里を殺した。僕が美野里に好きだなんて言わなかったら……ちゃんと駅まで送っていたら……ごめん。美野里、守ってあげられなくてごめんっ』
涙の粒が真っ白な床に吸い込まれていく。
『守ってくれたじゃない』
『え? 』
僕が顔を上げれば美野里が、僕の瞳を逸らさずに見つめた。
『ともくんは、ちゃんと私を守ってくれた。すごく嬉しかったよ。だから、ありがとうなんだよ』
美野里は僕からそっと掌を離すと、遠くに見える美しい景色を指差した。
『……もういかなきゃ』
『美野里っ、僕も!』
美野里が眉を下げながら微笑んだ。
『だめだよ。ともくんの人生はこれからなんだから。もう私の事で自分を責めたりしないで。ともくん自身の夢を見つけて、ともくんに幸せになってほしい』
『僕には、夢なんてないっ!美野里のそばに居たいんだっ』
『気づいてないだけだよ、ともくんはもう大丈夫。真っ直ぐに歩いていけるから……いつもありがとう。お姉ちゃんは、ともくんが大好きだったよ……』
気づけば、美野里の後ろ姿はあっという間に小さくなって綺麗な景色に吸い込まれていく。
──美野里……。
──ばいばい。ともくん。
長く艶やかな黒髪に白いコートの後ろ姿が見える。
『待って』
僕は慌ててその姿を追いかけるが、彼女との距離は全然縮まらない。
ダメだ。今行かせたら。もう二度と会えない。
──美野里!
僕は、息を切らしながら、ようやく美野里の肩に触れる。
ふわりと柔らかい黒髪が揺れると、美野里が大きな瞳をにこりと細めた。
『ともくん』
僕の鼓動は大きく一跳ねした。美野里に名前を呼んでもらったのはいつぶりだろうか。
『美野里ごめんね……僕……』
美野里は困ったような顔をしながら、僕の掌を握った。
『ともくん、ありがとう』
『え……? 』
美野里の掌は、氷のように冷たい。
『ともくんが謝ることなんて何一つないんだよ。いつも私の事、大事に思ってくれてありがとう……』
僕は、大きく首を振った。
『違うっ!僕が美野里を殺した。僕が美野里に好きだなんて言わなかったら……ちゃんと駅まで送っていたら……ごめん。美野里、守ってあげられなくてごめんっ』
涙の粒が真っ白な床に吸い込まれていく。
『守ってくれたじゃない』
『え? 』
僕が顔を上げれば美野里が、僕の瞳を逸らさずに見つめた。
『ともくんは、ちゃんと私を守ってくれた。すごく嬉しかったよ。だから、ありがとうなんだよ』
美野里は僕からそっと掌を離すと、遠くに見える美しい景色を指差した。
『……もういかなきゃ』
『美野里っ、僕も!』
美野里が眉を下げながら微笑んだ。
『だめだよ。ともくんの人生はこれからなんだから。もう私の事で自分を責めたりしないで。ともくん自身の夢を見つけて、ともくんに幸せになってほしい』
『僕には、夢なんてないっ!美野里のそばに居たいんだっ』
『気づいてないだけだよ、ともくんはもう大丈夫。真っ直ぐに歩いていけるから……いつもありがとう。お姉ちゃんは、ともくんが大好きだったよ……』
気づけば、美野里の後ろ姿はあっという間に小さくなって綺麗な景色に吸い込まれていく。
──美野里……。
──ばいばい。ともくん。