壊れるほどに愛さないで
第2章 戸惑いと嘘
「ただいまー」
「美織、おかえり」
友也が、黒のカフェエプロンをつけたまま、玄関まで出迎えてくれる。室内は、既にシチューのいい香りがしている。
「すごくいい匂い」
「でしょ」
私は、共同で使っている寝室にあるクローゼットにトレンチコートを、かけると、手洗いを済ませて、ダイニングへと向かった。
「わぁ、お店みたい」
すでにテーブルにはシチューとサラダが置かれ、フランスパンがカットされていて、ビレロイボッポのグラスには、ルイボスティーが注がれている。
「僕、センスあるよね、レストランの店員に転職しよかな」
「もう、すぐ調子にのるんだから」
「美織に怒られるのもいいね」
「ばか」
友也が、私の頬を突きながら、にんまり笑う。
そして、二人で向かい合いながら、シチューを口に入れていく。
「あ!美味しいっ」
「良かった」
友也が満足げに形の良い唇を引き上げた。
「ねぇ、美織、今日の健診どうだった?」
「うん、野田先生からは、いい音だって」
友也には記憶発作のことは話してない。友也に心配かけたくなくて、ついに言い出すことが出来なかった。それに、記憶発作も、もう随分長いこと起こしていない。この心臓とも丸3年目、私という別個体にも、ようやく馴染んできたのかもしれない。
「そっか、よかった、安心したよ」
友也は、長い指でスプーンを持ちながら、フランスパンに手を伸ばした。
「あ、ちゃんとプリン買ってきたからね」
「じゃあ、あとで、名推理をお聞かせするね」
「頼んだよ、名探偵」
そう返事をすると、友也は、二重瞼を、細めてにこりと、微笑んだ。
やがてシチューもサラダもパンも綺麗になくなって、私達は、二人並んで洗い物をすると、コーヒーを注いで、今度は隣同士に並んで座った。
「美織、おかえり」
友也が、黒のカフェエプロンをつけたまま、玄関まで出迎えてくれる。室内は、既にシチューのいい香りがしている。
「すごくいい匂い」
「でしょ」
私は、共同で使っている寝室にあるクローゼットにトレンチコートを、かけると、手洗いを済ませて、ダイニングへと向かった。
「わぁ、お店みたい」
すでにテーブルにはシチューとサラダが置かれ、フランスパンがカットされていて、ビレロイボッポのグラスには、ルイボスティーが注がれている。
「僕、センスあるよね、レストランの店員に転職しよかな」
「もう、すぐ調子にのるんだから」
「美織に怒られるのもいいね」
「ばか」
友也が、私の頬を突きながら、にんまり笑う。
そして、二人で向かい合いながら、シチューを口に入れていく。
「あ!美味しいっ」
「良かった」
友也が満足げに形の良い唇を引き上げた。
「ねぇ、美織、今日の健診どうだった?」
「うん、野田先生からは、いい音だって」
友也には記憶発作のことは話してない。友也に心配かけたくなくて、ついに言い出すことが出来なかった。それに、記憶発作も、もう随分長いこと起こしていない。この心臓とも丸3年目、私という別個体にも、ようやく馴染んできたのかもしれない。
「そっか、よかった、安心したよ」
友也は、長い指でスプーンを持ちながら、フランスパンに手を伸ばした。
「あ、ちゃんとプリン買ってきたからね」
「じゃあ、あとで、名推理をお聞かせするね」
「頼んだよ、名探偵」
そう返事をすると、友也は、二重瞼を、細めてにこりと、微笑んだ。
やがてシチューもサラダもパンも綺麗になくなって、私達は、二人並んで洗い物をすると、コーヒーを注いで、今度は隣同士に並んで座った。