恋の神様がくれた飴


追いかけてばかりで我慢をしていた私に
舞い降りた恋は心臓を酷使させる


「さぁ行きましょうか?」


土居のキラキラした笑顔に
胸がキュンと苦しくて


「えりさん今日も可愛い」


笑顔で歯の浮くような言葉を聞かせる土居に


「揶揄ってんの?」


言い返すのなんて精々これで精一杯


「顔、真っ赤ですよ?可愛いね」


それを躱して頭を撫でてくるところも
本当は凄く、凄く心地よくて

甘やかされることって

なんか・・・幸せ



土居との恋はこうして始まった





会社の駐車場に車を置いて手を繋いで歩く

中央駅までの十分の間には
裏通りのような土産物屋さんは殆どないけれど
ミニスーパーやコンビニが数軒、ギャラリー、ブティックに銀行と多彩な通り

それらを眺めながら駅に着くと駅ナカでランチにした

そのあとは少し買い物をしようと隣接するデパートへと入った


「まずは、クッションから」


楽しそうな土居に連れられて進む買い物は

可愛いクッションから始まって
ペアのマグカップや小物へと続いた


「これで、えりさん楽になりますね」


そう言って持ち上げてみせるクッションは厚みのあるフロア用で
ソファも食卓テーブルもない土居の部屋で
フローリングの床に座らされる心配がなくなった


「置きに戻っても良いですか?」


私にひとつも持たせない買い物袋は
サンタクロースばりに肩にかけていて
大したものは買っていないとはいえ重そうだ


「うん」


流石に手は繋げなくなったけれど
二人並んで歩くだけで、こんなに楽しい


「土居って長男じゃないよね」


「真ん中ですよ」


「・・・だよね
だって甘えん坊だもんね」


土居を見上げてフフと笑えば


「えりさん酷~~い」


想像通りの答えが返ってきた

楽しい会話は距離を忘れ、あっという間に土居の部屋に着いた


ベランダ側の窓を開けて風を入れる


「高さがあると眺めが良いね」


街の景色を眺めていると、土居が隣に並んだ


「でしょ。ここに住める特権も
今の会社の魅力です」


「実家には帰ってんの?」


「たまにですけど」


頭を掻く手が可愛い


「土居はモテるよね」


嫉妬じゃなくてそう思う


「はい凄くモテます」


自信たっぷり顔にプッと吹き出した


「言うよね~、で、そのモテる土居がなんで私?」


これも素直な気持ち


「いくらモテても、好きな人に振り向いて貰えないのなら
少しも嬉しくないのに・・・」


隣から伸びてきた腕に引き寄せられ
腕の中に収められた



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