俺は◯んで、幼なじみの体を乗っ取った
そんな話し初めて聞いたんだけど…

ただの変わり者だと思ってた。

性格が悪いから誰とも上手くやっていけないし、友達が出来ないんだと勝手に決めつけていた。

でも、そうじゃなかった。

アスペルガー症候群…

聞いたことのある言葉…

発達障害の1つ…

萌歌は萌歌なりに相当辛く苦しい思いをしてきたに違いない。

「それだけでもありがたいのに、私の為に凪沙はアイツと付き合うのを拒んだ。凪沙だってアイツのこと好きで好きで仕方なかったくせに私の為に自分を犠牲にして…本当にバカだよ。バカすぎるよ…」

「萌歌…」

「私はアイツが好き。大好き。初めて好きになった男の人。アイツは憶えてないと思うけど、高校入試の教室でアイツと隣同士の席になったの。試験中に私は消しゴムを落としてしまい、コロコロと転がって何処かに行ってしまった。そんな状況を見ていたアイツは自分の持っていた消しゴムを試験官にわからないように私に渡してくれたの。試験が終わって気付いたんだけど、アイツ消しゴムを1つしか持ってないくせに私に渡してくれたんだ。バカな人だと思った」

「忘れる訳ないだろ…」

あの時の女子が萌歌だったのは今の今まで気付かなかったけど、試験中に消しゴムを隣の席の女子に渡したのは憶えてる。

「これ見て?」

「もっ‥もしかして俺…じゃなくてカッちゃんが渡したって言う消しゴム?」

「そうなの。今でも大事に持ってるんだ」

「まさか、あの時の消しゴムだなんて…」

「何か言った?」

「うぅん…」

「でも、私は恋に落ちた。あの瞬間から私はアイツのことが好きで好きで仕方なくなった。幸せなことに私は高校1年2年とアイツと同じクラスになった。そして世界でたった1人の親友ができた。でも、皮肉なことに私の親友とアイツは幼なじみで両想いだった。すごく仲が良くて、いつもイチャイチャしていて羨ましかった反面、悔しかった。付き合っちゃえば諦めがついたけど、2人は付き合わなかった。変な関係がずっと続いていた。そんな2人を見るのがツラかったし苦しかった。でも、私ってアスペルガー症候群じゃん。空気読めないし、人の気持なんてわからない。わからないから好きな人にどう接していいかわからない。気付いたらアイツに冷たく当たってた。好きなのに嫌ってるような態度をとってた。それでも私はアイツのことが好きで好きで自分の気持を抑えることが出来なくなっていた。放課後に教室に残ってアイツの席に座ってアイツの私物に触れた。教科書に絶対にバレないように暗号で好きって書いた。至る所に暗号と絵を書いた。机の中も整理してあげた。机の横に引っかかってる体操服の匂いを嗅いだりもした。私ってやっぱり頭がおかしいんだと思ったよ」

そう言えば、しょっちゅう教科書にイタズラ書きがされていた。

机の中も、グチャグチャにしていたはずなのに、学校に来るとキレイに整理されていた。

体操服も手提げに適当に突っ込んでいただけのはずなのに、キレイに畳まれていた。

まさか、萌歌がやってくれていたなんて…
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