大嫌いで愛しいもの

センセーの電話

『センセーの電話』



電話なんて出んわ。

そんなダジャレで慰めて。

恐る恐る液晶をタップ。

その子の気持ち,分かってる?

ドキドキと嫌な汗を流して。

嫌な予感を滾らせて。

『はい』と呟くその子の気持ち。

『どうですか?』

『どうもしませんよ』

分かってるんでしょう。

それ以外は,少し困るだけでしょう。

用事はそれだけですか?

ううん

『ありがとうございます』

ピッと短い音が,心臓をようやく動かすの。

だけど私は



『私のこと,忘れてない? 怒ってる? 皆はどう? 大丈夫? ちゃんと寝て,行かなくちゃ』

『大丈夫かな,心配だな。日数もそろそろ……色々遅れちゃうよ。明日は来れるかな』



その子へ繋ぐコールを,断ち切れない。
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