十年前の約束
あれ、何だっけ。これ。
三段ボックスの二段目の奥にある、ピンク色の黄ばんだ箱が目に付いた。
既に探し当てていた目的物のCDをいったんフローリングの床に置き、私は箱を持ち上げた。A5サイズよりひと回りほど大きい。
じっとりと汗ばんだ手で箱を開けると、子供の頃にやり取りをした手紙の数々と、黄色いフェルトで縫われた手作りのお守りが出てきた。
「……うわぁ。懐かしいっ」
手紙はどれもこれも“高橋 春香さま”と自身の名で宛てられていて、送り主の名前は水谷 真帆となっている。
子供の頃、仲良しだった友達だ。私は同い年の彼女が大好きだった。
真帆ちゃんは大人しくて、教室の隅でよく本を読んでいた。引っ込み思案なところがあり、休み時間はいつも私から声を掛けていた。
これ全部、真帆ちゃんから届いたものだ。可愛い便箋に綴られた彼女の丸文字を目でなぞり、懐かしくもどこか嬉しい気持ちに満たされた。
自然と口元がほころんでいた。
「春香〜、探してたCDは有ったの?」
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