エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
プロローグ
気付くと昴さんの唇が自分のそれに重なっていた。
「ふっ、んっ……」
少しシャンパンの香りがして、やっぱりすごく甘い……。
その甘みに目を細めると、昴さんは一瞬唇を離してもう一度重ねる。今度は深く。
その味をずっとかみしめていたくて、這わされた舌に自分の舌を絡めていた。
昴さんの手が背中に回ると、ワンピースのファスナーが下ろされる感触がしてハッとする。
思わず両手で彼の胸を押して、顔を背けた。
「ま、待って。だめです。それは……」
「香澄が煽ったんだ」
「これ、“離婚旅行”ですよ?」
旅行初日、他のカップルに新婚旅行と間違われ、離婚旅行なのに、と毒づいたのは私だ。
事実、私たちはこの旅行が終わったら一年間の結婚生活に終止符を打つことになっている。
昴さんは真剣な目で私の瞳を捉えると、頬を撫でた。
「香澄は、嫌か?」
嫌じゃない。
なんて、私から言えるはずがない。
怯んだ私に気づいて追い打ちをかけるように彼は言う。
「返事がないなら、一生、俺を忘れられないようにするからな」
決意するような低い声で耳元に囁かれ、もう一度強く抱きしめられた。
私は返事の代わりに、そっと彼の背中に腕を回していた。