エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

 帰りは夜の便。日本に戻るのはまた夜の予定だ。

 少し早めにシャルル・ド・ゴール空港に向かうと、行きの便で一緒だった新婚夫婦に声をかけられた。
 二人とも顔が晴れやかで、楽しい旅だったのだろうとそれだけでわかる。

「行きの便も同じでしたね。私、成山里穂っていいます。夫は成山大翔」
「一之宮昴です。こちらは妻の香澄です」

 少し無口な旦那さんの代わりに里穂さんが言って、昴さんが私も紹介してくれた。

(妻……)

 昴さんの言葉に心がぎゅっと締め付けられる。
 嬉しいのに、もうすぐ妻でなくなることがやっぱり苦しい。

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