エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
飛行機に乗り込んでからも、昨日からほとんど寝てなくて身体は疲れているはずなのに全然眠れなかった。
昴さんが行きと同じように、手なんて繋ぐからもっと。
日本に飛行機が近づくのを感じたとき、少しでも気を緩めると泣いてしまいそうで、顔を昴さんとは反対方向に背けていた。
「……離婚旅行が、永遠に続けばよかったのに」
聞こえないようにボソリと呟く。
その時には、それが自分にとっての唯一の願いになっていたのかもしれない。もちろんそれは、わがままでしかない話だ。
クリュニー中世美術館であの絵を見た時は、彼の一番大事にしている病院がこれからも続いて行くことを一番に願ったのに。
わがままも幸せも全部、この一年に詰め込んで、大事に箱にしまってしまうつもりだった。
決めたつもりで、それでも気持ちが揺れ続けた最後の旅行だった。
もうすぐそんな旅も終わる。