エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

「続けないか」

 隣から低い声が聞こえる。
 思わず昴さんの方を向いていた。

 昴さんはじっと私の目を捉えると、はっきりと言う。

「いつかどちらかが先に死んで別れなきゃいけない時が来るんだ。それまで、ふたりでいないか?」

 固まってしまって、それからハッとして慌てて首を横に振る。

「ごめんなさい。さっきの、聞かなかったことにしてください」
「さっきのが本音だろ」

 言い当てられて、言葉に詰まる。
 私は自分の手を握り締める。

 なんで彼は私の決意を揺るがすようなことばかり言うのだろう。それが少し腹立たしくもあった。
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