エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
だから思わず口を開いてしまったんだ。
昴さんに言ったことはなかった。言うつもりだってなかったのに。
「私は子どもが当たり前にできるかわからないんですよ」
「……え?」
「さっき里穂さんに『これから子どもを産んで、子どもを育てて……子どもが独立したら老夫婦で旅行してまた一緒の便に乗ってたりして』って言ってもらったんです。でも私は当たり前にはそれを想像できない」
昴さんはそれを聞いた後、少し驚いた顔で私を見た。
「……もしかして、一番引っかかってるのは子どものことだったのか?」
「それは……」
「そうなんだな? どうして言わなかった」
昴さんが確信したように言う。
味覚のこと、身体のこと……なにより子どものこと。
絶対に迷惑になるって分かってた。言ってもどうにもならない問題だ。
子どもができないと病院は続かない。一之宮総合病院は、ずっと実子があとを継いでいるのだ。