エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

「それじゃダメなんですよ、昴さんは」
「病院のことか? それならなんとかなるだろ」
「なんとかなりませんよ。私が妻じゃ、あなたの足手まといにしかならない」

「香澄が足手まといになんてなるはずないだろ。香澄がいたからできたことの方が多いのに」

 昴さんは言う。
 私は首を横に振った。

「それでもだめ」
「そういう頑ななとこ、かわいくないな」
「かわいくなくていいです。離婚するのに」

 怒って、ぷい、と横を向く。
 昴さんは隣で小さくため息をついた。

 呆れて、もう知らない、と怒ってくれたらいい。
 突き放してくれればちゃんと踏ん切りだってつく。

 そう思っていた。
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