エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

 昴さんが走って行った方向を見てみると、その近くで女性が座り込んでいるのが目に入る。
 女性を見て、私もハッとして立ち上がった。

 そして慌てて彼女の方に走って行った。
 青ざめて今にも泣きそうになっている里穂さんの方にーー。

「大翔くんが……突然倒れて……」

 倒れたのは里穂さんの夫の大翔さんらしい。
 言葉につまる里穂さんをぎゅっと抱きしめ、背中をゆっくりさする。

 そうすると里穂さんはぼろぼろと泣き始めた。

「どうしよう……大翔くん、死んじゃったら!」
「大翔さんは大丈夫、昴さんがいます。昴さんは普段から救急にもたくさん対応してる医師なの。だから安心して」

 病院ではなく飛行機の中。いつもと状況も違うだろうけど、今まで寝るまも惜しんで仕事に向き合っていた昴さんを間近で見ていた一人だからか、昴さんがいれば大丈夫だと思わされた。
 強く言った私を見て、里穂さんは頷く。

「うっ、っく……、うんっ」
「それに、里穂さんには私がついているから。信じて待ちましょう」

 私にはそれしか言えなかったけど、何度も頷く里穂さんを強く抱きしめていた。
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