エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
14章『1か月前』
平日の昼前、玄関ドアの鍵が開いた音がした。
ちょうど準備していた引っ越し用のダンボール箱と旅行用のスーツケースを端に寄せて、部屋から出る。
やっぱり帰ってきたのは昴さんで、彼が顔を綻ばせたのを見て、私もつい微笑んでしまった。
「ただいま」
「おかえりなさい。珍しい時間ですね? 今日診察は……?」
「今月から外来は任せてるんだ」
「そうなんですね」
忙しいのには変わりはないけど、病院もちょっとずつ変わり始めていると肌で感じる。
兄もなぜか少し腑に落ちない顔をしながらも、そう言っていたし……。
「シャワー浴びてくる」
「はい」
もう結婚生活は残り一か月。
私はこれまで通り、昴さんの帰ってくる数十分を楽しみにしていた。
お昼に差し掛かる時間だったので、私は冷蔵庫から野菜やお魚を取り出して手早く準備を始めた。