エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
少ししてやっと彼は私を抱きしめるのをやめ、苦笑しながら自分の背中を押さえた。
「結構固い鞄だったな」
「……な、なに……?」
なんとなく事態を察知していたけど聞いてしまう。
「彼女にずっとしつこく付きまとわれていたんだ。結婚したい相手がいるからと断っても信じてくれなくて。そんなに信じられないなら、今日、ここに来てくれって伝えていた。その彼女と21時から泊まる予定だからって」
「ま、また私を断る口実に使ったんですか⁉」
情けない声が出る。
“また”というからには、これは一度目じゃない。
なんと五度目だ……。
もちろん私と彼は付き合ってるわけでも、結婚する予定があるわけでもない。
こうやって彼は、あまりに女性からの誘いがしつこいと私を都合よく使うのだ。