エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

 自宅のマンションに戻ると、やけにほっとする。
 一人で暮らしていたときは、ここが家だと認識すらできてなかったような気がするのに、香澄がきてから変わった。

「帰ってきたって気がするな……」

 ここは帰りたい場所で、帰る場所になっていた。
 だからここに帰ることができるように、一年必死にやって来た。

 俺が呟くと、香澄が少し顔を赤くして微笑んだ。
 それから息を吸って口を開く。

「あの……もしかしたら誤解されてるのかな、と思ってたんですが、私、優太先生のお話、お断りしましたよ?」
「え? そうなのか? いつ?」
「1ヶ月前です」

 旅行前、神也から花畑が香澄にプロポーズしたことを聞いた。
 しかし、断ったところまでは聞いていない。

 神也のことだから、あえて伝えなかったのではないかと疑ってしまう。
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