エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
17章『3か月後』

「香澄先生?」

 一之宮総合病院の脳外科の待合椅子に座っていると、あちらからやって来た山中小春先生に声をかけられた。
 小春先生は、私の二つ下の後輩で病棟保育士だ。

 私が働いていたときに入った新人だったけど、いつのまにかもうすっかりベテランの顔をしていて頼もしい。
 でも新人の時から変わらない、くりくりした丸い目を私に向けて小春先生は微笑む。

「やっぱり香澄先生! 元気そうでよかった。今日は定期検査ですか?」
「うん。これがよければ検査も半年ごとになるの」

 私が頭を指して言う。
 傷口の縫合も綺麗で髪もあるので、キズがあることすらこちらから言わないと分からないくらいだ。

「ほんと、随分よくなったんですね。安心しました」

 小春先生はほっとしたように息を吐く。

 急に怪我をして退職し、すごく迷惑をかけたと思うのに……。
 働いている時はみんな真面目な印象だったけど、真面目で優しい人たちだったんだと再確認した気がした。
< 161 / 219 >

この作品をシェア

pagetop