エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む
17章『3か月後』
「香澄先生?」
一之宮総合病院の脳外科の待合椅子に座っていると、あちらからやって来た山中小春先生に声をかけられた。
小春先生は、私の二つ下の後輩で病棟保育士だ。
私が働いていたときに入った新人だったけど、いつのまにかもうすっかりベテランの顔をしていて頼もしい。
でも新人の時から変わらない、くりくりした丸い目を私に向けて小春先生は微笑む。
「やっぱり香澄先生! 元気そうでよかった。今日は定期検査ですか?」
「うん。これがよければ検査も半年ごとになるの」
私が頭を指して言う。
傷口の縫合も綺麗で髪もあるので、キズがあることすらこちらから言わないと分からないくらいだ。
「ほんと、随分よくなったんですね。安心しました」
小春先生はほっとしたように息を吐く。
急に怪我をして退職し、すごく迷惑をかけたと思うのに……。
働いている時はみんな真面目な印象だったけど、真面目で優しい人たちだったんだと再確認した気がした。