エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

「花畑先生のところも行ったんだって?」

 神也は息を吐いて聞く。
 確かに先月、花畑に会いに大阪まで行った。

「あぁ、香澄が顔を出しておきたいと言って」
「いい男だろ。好きな人のために身を引くなんて」

 花畑に面と向かって分かったのは、やはり花畑も彼女を愛してたってこと。

「でも、俺には身を引くなんて無理だし、身を引く気持ちを理解できない。俺は俺の周りを変えたとしても、自分で香澄を幸せにしたかったし、それしかできないと思った」

 もしかしたら、花畑と香澄は似ているのかもしれない、とも感じた。
 相手のことを思って、自分が身を引くような愛し方。

 でも俺にはそんなこと微塵も考えられないし、できない。
 俺には香澄を失うことなんて、どう考えても無理だ。

 それより、どうやって彼女を繋ぎ止めるか、どうやってこちらを向かせるか真剣に考えたい。

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