エリート脳外科医は離婚前提の契約妻を溺愛猛攻で囲い込む

「辻中さんね、それから何度か恋人もできたらしいんだが、長続きしなくて……別れるたびに摂食障害になって苦しい思いをしたみたいだ。そんな思いの中で三年前、君のいる病院になんとなく足が向いて、働く香澄さんを見かけた」

 辻中さんは患者としてではなく、待合室で、患者のふりをしてすわっていたそうだ。
 だから病院の記録にも彼女の通院歴は昔のものしか残っていなかった。

「香澄さんは好きな仕事をして楽しそうに働いていて、君とも幸せそうに話していて、それを見ているとまた不安定になってきたみたいなんだ」
「精神的に不安定になるのは分かりますが……勝手に見て勝手に嫉妬して、少々身勝手ではないでしょうか。見なければいいだけで」

「それでも気になる。そんな人もいるのは分かるだろ」
「いるのは分かっていますが、理解しかねます」

 はっきり言うと、正司先生は「キミは昔から精神的にかなり強いほうだからね」と苦笑した。
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